「その海から」(21〜30)/たもつ
 
を呼んだ
他の名前を呼ばれても
たぶん気づかなかった



24

水槽と同じ匂いの犬が
古ぼけた庭を走り回っている

無言で門扉を直す豆腐売りの
懐かしい肩だけが見える

他がどうなってるか
知る人も今では少なくなった



25

あなたの肋骨と肋骨の間に
一区画の土地がある
あなたが家を造っている
造りかけの家に
夕食時の家族の団欒がある
僕もその中の一人だった
人数を数えていたら
あなたはパジャマを直して
肋骨を閉じた



26

リトマス試験紙が
赤く反応した
近くのやかんには
湯冷ましが半分入っていた
プラ
[次のページ]
   グループ"詩群「その海から」"
   Point(20)