「その海から」(11〜20)/たもつ
11
ジャングルジムの上で
傘の脱皮を手伝う
またやってくる
次、のために
海水浴の帰り道
人の肌が一様に湿っている
12
ピアノを弾くと
鍵盤がしっとり柔らかくて
むかし手をつないだ人の
指に似ている
かいているのは本当に汗だろうか
ハンカチで顔を拭いても
パイプ椅子のような感じしかしない
13
空に向かって開かれた傷口から
無数のインコが飛び出していく
いつか名札も返して欲しい
14
紙の港から出航した
一隻の船を
雌カマキリが
美味しそうに食べた
石積みの橋の上
兄弟の内緒話は終
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