「その海から」(21〜30)/たもつ
 
21

カレンダーを見ると
夏の途中だった
日付は海で満たされていた
子供だろうか
小さな鮫が落ちて
少し跳ねた
恐くないように
拾って元に戻した



22

フライパンが笑っていた
自分を鳥類図鑑か何かと間違えていたのだった
図鑑は笑わないことを教えてあげた
図鑑のように笑わなくなった
静かに朝の始まる頃
台所の方から
鳥の羽ばたく音が聞こえてくる



23

朝、一人の銀行強盗が
なくした僕のブランコを
届けに来てくれた
特に困っていたわけでもなかったが
なければないで少し不便にしていた
一日草の花びらが後から
僕の名前を呼
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