「その海から」(31〜40)/たもつ
 
 
 
31

世界が坂道と衝突する
アゲハチョウの羽が
誰かの空砲になって響く

内海に
大量のデッキブラシが
投棄された夏

遠近法のすべてを燃やして
子等は走る



32

首府は雨季をむかえていた
人と同じ生き物が
街中のいたるところで
影をつくっていた
皮膚病の犬がかわいそうに
水をたくさん飲んでいる
地主を名乗る男の
さっきからうるさい、瞬きが



33

昨日、家に
好き嫌い、が遊びに来て

好き嫌い、をたくさん言って

サルとワニの
追いかけっこは果てしなく続き

以下同文
のような笹舟に乗って
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