降り来る言葉 LXI/木立 悟
に重なる廃屋のかたち
雨どいを流れる声の色
風は毎日
消しては運ぶ
毒の光 息の光
夜へ向かう街
さざめく無人
金をすぎる 蒼をすぎる
兆しの一歩 兆しの火
水の全季 呼吸の螺旋
手にした鼓
陰を透る
冬とふちどり
持たざる声
そのままの水
そのままの宙
遊び弄び 行方は遠く
道はむらさき どうしようもなく
去りゆく鬼の背 けだものの背
同じ血と知る 土と牙の道
腔と脂
滴と穂
鏡のなかの街は葛色
いつわりも人もいない色
手の甲で
さえぎれるだけの光をさえぎり
水に落ちる枝の影
不確かな色の時間を
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