降り来る言葉 LXII/木立 悟
曇が降るほうへ
鳥は振り返る
けだものの背が
鏡にたなびく
借物の手が
借物の命を受け取る
こがね色の子が手の甲を聴く
曇のなかの月へ手をかざす
谷底へ傾く裸体
透明な楔に
押さえつけられているかのように
岩のはざまから動かない
木々の奥に
霧はひとり居る
幾度も幾度もひとりになり
ひとりに満ちる
おぼろげに雨を組み立て
荒地に放つ
海の向こうに撒かれる灯
蒼に土に
やがて 消える
うろたえるな
放置された曲線の上で
うろたえるな
風や 首輪の無い白が
さらに遠くの白へ吼える
冬は曲
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