降り来る言葉 LXI/木立 悟
木陰に置かれたこがねの車輪が
午後を静かに染めている
蒼の扉の前で躊躇し
坂の下の影を振り返る
稲妻が生まれる直前に
すべての曇は止まっている
階段を見上げる蒼い傘
時間の斑を映している
影がたまり
薄明かりが差し
曲がり角だけが残り
森へ向かう
人ではないもの
近く 近く
みどり 格子
冷ややかな 波
さかさまの目に
終わりは終わりに映らない
静けさ 気づけなさ
何もなさが降りつづく
壁に描かれた花も火も
午後の光になだめられ
星が来るまでじっとしている
樹と径だけの景のなかで
空に重
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