降り来る言葉 LX/木立 悟
けものの時間が人から生えて
見知らぬかたちをなぞりかがやく
断崖まで 河口まで
海へ至る昼
白く傾いで
高さは低さ
流れなだらか
板たち 鳥たち 兄妹たち
刺しては認める影の針たち
暗がりへ 暗がりのむこうへと
導くことさえしない瞳たち
むらさきの葉を一枚ちぎり
まぶしくてあけられぬ片目に添わせ
誰を見るつもりもない水を見ひらく
誰も曇りに午後を見ない日
硬さでもなく
滅びでもなく
鉄のまま広く生きつづける息
短い朝のむらさきを着る
火口湖に夜をひたす手
城壁をめぐる階段に
砂を運んでは足跡を消す
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