降り来る言葉 LX/木立 悟
消す
正方形だけが歪んで見えて
他のかたちは皆そのままの日
アンテナの森から林から
宙を染める曇の碧
斜面を覆う灯
常に何処かを駆ける足音
明るさを明るさにかき消す波
粒とも切れ端ともつかぬかがやき
うすい紙を
転がる夜
部屋の四隅の見張り役
建設ではない建設の音
滅びでもなく
息抜きでもなく
野と街のはざまの無音に
ひたされる手のひら
ただ頭をたれたまま
水色の影絵を盗み見ながら
いつかは消える岩の碑文に
草の読み仮名を添えつづけている
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