降り来る言葉 XVI/木立 悟
笑み
水のように 尾のように
水草のなかの尾のように
水底をのぞく鳥のように
水面に映る空ゆく鳥を
水底から見つめる目のように
五本の指に十本かくれ
三本の指見えかくれ
捕らえようとする指の影まじり
どこからどこまで指なのか
いつからいつまで羽なのか
月は大きな独りなので
小さな独りが見つめてやまない
ああ雲に出入りするよ
自分が自分に重なるよ
見えなくなるよ 笑っているよ
見えなくなるのに悲しくないよ
伝える機械がみんな壊れて
つながりは水たまりにまかされた
伝えたい人 伝わりたい人
昼に眠り 夜に目覚めて
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