降り来る言葉 XVI/木立 悟
 

水たまりを見つめて微笑んだ



飾りの秘密にふるえる瞳
細くやわらかな髪の毛は
蝶の足に結ぶため
蝶の色と語るため



光は指の股をとおって
土に吸い込まれる水を見た
硬いかけらの過去を見た
鳴り響く小さな渦を見た



離れてゆく
去ってゆく
伝わるものからみな下りてゆく
雲に新たな芽が現われて
高い壁の上に視線をからめ
海に沈む衛星を見る



夜は既に降っていて
まるいかたちになってゆく
鳥は耳に
耳は頬に
頬は光に指ひたすひとに
かがやく綿毛の夜を手わたす



太陽の眠りのなかの魚
活動期の星の自転と公転
山脈も極地も海溝も
巨きな羽になってゆく
煮えたぎる羽 凍る羽
縦にひらく羽になり
世界の半分をさざめかせてゆく





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