降り来る言葉 XX/木立 悟
 




わたり鳥の光のかたむき
水と草とに散ってゆく声
拾う者なく散ってゆく声
あたたかな隙間ある冬のはじまり


器にはまだ水があり
夜の雲を映している
緑を覆う緑の暗がり
水の道を
小さな火が歩いてゆく
明るい水紋が
遠くまでつづいてゆく


熱のない火に照らされたまま
鳥は中庭の歪みを見ている
火はどこか火ではなく
指のように
羽のように
鳥の姿を包んでいる


坂の上に思い出があり
いつまでもたどりつくことができない
あたりは暗く
小さな火だけがすぎてゆく
坂をのぼりゆくひとつの影
角を曲がり 消えてゆく


あざやかな
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