降り来る言葉 XX/木立 悟
かな穀物や実のふるえ
低い丘に咲く芥子の花たちが
いつか降る陽に色あせながら
時など知らぬとでも言いたげに
羊ではなくなった羊たちに喰まれている
こどもに生まれ
こどもに死す
家々の戸口に
坂の上に
かつて触れたはずの背が
葉を眠らせる葉のようにたたずみ
生まれ死ぬものたちに名を贈る
傷に編まれたひとときが
冬に緑を手わたしてゆく
鳥の姿の草たちが
枯れ野の金を越えてゆくとき
器の水に
器の水をそそぐとき
夜のかがやきのかたまりは
ふちどりもなくにじみつづける
流れ出たものをふたたび呑みほし
光のこどもは こどもらは
星とは異なる世界をつくる
同じひとつの年のうちに
訪れる四度めの冬の日に
器は忌みの言葉にかがやき
緑と金のさかいめたまゆら
火の指に火の指にふりまいてゆく
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