降り来る言葉 XLVIII/木立 悟
夜が
片方の手に獲られる
片方の手に
片方の手が乗る
夜は
じっとしている
何もない場所にただ建てられた
何にひとつ隔てるもののない壁
霧の舟が
霧に還るのを見ている
菓子の夜
冠の夜をすぎ
電熱線
鉄条網
にじむ音の夜
取り戻せないものを映し
鏡は吼える
鏡は吼える
自らを焼くように反りかえる
夜が去る前に
次の夜が来る
夜は
水ばかり聴いている
生まれを消す火
骨を消す火
風が水を吹いている
離れたくないほうから
水は 光りだす
目と目のあいだ 指の交差
半
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