降り来る言葉 LI/木立 悟
何も持たない夕暮れに
二度書きの日の生き死にの
近すぎる礫と礫の声
何も持たない波と波
どこまでも
誰も居らず
どこまでも
羽と羽と羽
空洞の
明かりの下
北が南に
触れている
細かな爪
細かな鍵
夜から朝
まぶたの上のまぶたの発芽
ななめ下の空は欠け
見上げる緑 まなざしの外
髪のなかの小さな羽
一度手にしたものらのふるえ
仮名が積もる
雪が積もる
痛みと指先
脳という名のはらわたに
燃える冠と花嫁
雨が野に原に立つ
あらゆる縦の
波にひらく
右も左も粗く密で
冬
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