降り来る言葉 LI/木立 悟
冬から先は見るものもなく
喉にかかげた筆の硬さを
水と光はすべりゆく
河口の両脇にうずくまる
夜盗の前の
三つの方向
波を描きつづける紙の灯
水に向かってひび割れる空
まなじりの端
飛沫の塔
銀へ銀を積むかたち
はじまりから欠けていて
元にもどる元さえ持たない
そのつらなりに在り熱を浴び
さらに欠けながら立ちつくす
骨の上に眠りめざめ
静かな静かな移動を聴く
遠去かるのか近づくのか
すぎては円を描くのか
橋と橋のはざまの空
正夢と白紙
つづきのつづきを
歩いてゆく
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