あおしんじゅ/もも うさぎ
あおしんじゅの森は
樹海の森だったし
あたしはその結晶を とても美しいと思った
粒の小さい 白い涙のようなそれは
体に悪いと知っても
飲み込み続けるよりなかった
ゆるい雪のように
花はしばらく降り
世界は少しずつ眠る
まぶたのおりたあなたの唇に
そっと指を触れた
あたしは指だけで その味に体中をしずませる 夜
あなたのまわりには
あおしんじゅが降りはじめていた
あなたは気づかないけれど
あたしは見ていた
それはリキュールグラスの中に
カーテンレールのすみに
果物皿の反射する水滴に
その睫毛を凍らせた冬の月に
バックミラーの涙に
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