あおしんじゅ/もも うさぎ
 
あおしんじゅの森は
樹海の森だったし

あたしはその結晶を とても美しいと思った
粒の小さい 白い涙のようなそれは
体に悪いと知っても
飲み込み続けるよりなかった


ゆるい雪のように
花はしばらく降り
世界は少しずつ眠る


まぶたのおりたあなたの唇に
そっと指を触れた
あたしは指だけで その味に体中をしずませる 夜

あなたのまわりには
あおしんじゅが降りはじめていた
あなたは気づかないけれど
あたしは見ていた

それはリキュールグラスの中に
カーテンレールのすみに
果物皿の反射する水滴に
その睫毛を凍らせた冬の月に
バックミラーの涙に

[次のページ]
   グループ"契約"
   Point(31)