ヒューム「ベルグソンの芸術論」(1)/藤原 実
る諸瞬間をもち」「諸状態が相互に切り離され」ている固定された自我が形作られることになります。それは「難なく言葉で表現されるような自我」、ベルクソンが「第二の自我」と呼んだものです。
私たちが通常「表現」と思っているものなどは、ベルクソンに言わせれば「自分では感情を分析したつもりでも、実は感情の代わりに、言葉に翻訳できる無生気な諸状態を並置しただけ」にすぎません。そして詩人や小説家に求められるのは、
言語がそのようにして降格させた私たちの感情や観念を公衆の領域から引き出し、多くのディテールを併置しながら、それらに元の生き生きとした個性を取り戻そうとする能力
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