ヒューム「ベルグソンの芸術論」(2)/藤原 実
西脇順三郎は『雑草と記憶』というエッセイのなかで、
私など自然の風情を愛する気持ちは全く vision であって thought からでない。ワーズワスと違いそれは何等神に通ずるすべもないものだ。vision といっても Blake の意味する vision でもない。それは全く現世的なもので、古い一文銭の追憶としての vision で、ただ人生の唯一の夢であるにすぎない
と述べていますが、ヒュームもまたロマン主義者たちが神秘性の象徴として好んで取りあげ、思い入れたっぷりに歌いあげた題材である「月」の姿を一個の風船玉としか見ませ
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