ヒューム「ベルグソンの芸術論」(2)/藤原 実
 
ません。


夜更けて ものしずかなドッグの上に
中空高くそびえたつ帆柱の索具にからまって、
月がかかっている。あんなに遙かに思われたものも、
なんのことない、子供の置き忘れた風船のようだ――。

   (T.E.ヒューム「ドックの上に」[訳]長谷川鑛平:法政大学出版局)


未来派もまたロマン主義的な月のイメージに反発します。彼らは数百個の電気の光をかざして月の光を抹殺しようとします。


高原の空気のようにとらえどころのない孤独のなかで、叫び声が聞こえた。

「月の光を殺そう!」


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