夜更けて ものしずかなドッグの上に 中空高くそびえたつ帆柱の索具にからまって、 月がかかっている。あんなに遙かに思われたものも、 なんのことない、子供の置き忘れた風船のようだ――。 (T.E.ヒューム「ドックの上に」[訳]長谷川鑛平:法政大学出版局)
高原の空気のようにとらえどころのない孤独のなかで、叫び声が聞こえた。 「月の光を殺そう!」 い [次のページ] 前 次 グループ"『世界の詩論』(青土社)を読む" 編 削 Point(5)