ヒューム「ベルグソンの芸術論」(1)/藤原 実
した彼らの冒険は、未来派とは異なり、一切の価値観の相対化をめざすものだった。「秩序=無秩序、私=非私、肯定=否定」という、ツァラが一九一八年に発明した等式は、あのヨーロッパ近代型の二項対立の失効をすでに宣言していた。意味から切り離された言葉は、主体の意思を伝える便利な道具であることをやめて、文字どおりのモノ=オブジェとして、ただ偶然だけによって漂流しはじめるほかはなかったからだ。
そのことをパロディ的に戯画化したのが、新聞記事を切り刻んで、でたらめに組み合わせて詩をつくる「ダダの作詩法」(ツァラ)だった」
「……ダダによる意味との切断は、主体からの距離によって言葉やモノの意味が定められるとい
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