ヒューム「ベルグソンの芸術論」(1)/藤原 実
te>
彼女は教育を受けたインテリだったが、偶然の事情から、活動写真をまだ一度も見たことがなかった。
…そこでは、大衆的な喜劇を上映していたのだが、シベリアの少女は蒼白になり、ぶるぶる震えながら家に帰って来た。
「映画は面白かったかい?」と、誰かがたずねた。彼女はしばらくの間、答えることもできないで、突っ立っていた。自分の見た光景にひどく圧倒されていたのだ。
「何てひどいんでしょう」とついに彼女は云った。「所もあろうにこのモスクワで、あんなひどいものを見せることが許されているなんて」
「へえ、いったい、何を見たのかね?」
「人間の体がバラバラにされ、頭や足や手がみんな離ればなれになって
[次のページ]
前 次 グループ"『世界の詩論』(青土社)を読む"
編 削 Point(8)