ヒューム「ベルグソンの芸術論」(2)/藤原 実
 
り、芸術家が人よりも多くのものを知覚するのはその知覚を利用しようと考えないからである」(「変化の知覚」『思想と動くもの』[訳]河野与一:岩波文庫)と述べていることに通じるように思います。


 われわれが物に対するわれわれの知覚よりも高いところにのぼろうとしないで、知覚を掘り下げ拡げるためにそのなかに沈んでいくと考えてごらんなさい。われわれがその中にわれわれの意志を入れこみ、その意志が拡がるとともにわれわれの眺めも拡げていくと考えてごらんなさい。
そうすれば、われわれは感覚や意識の与えられた条件を少しも犠牲にしないような哲学を得ます。そこではどんな性質も、事象のどん
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