エフィメラ(或いは邂逅)/恋月 ぴの
 
とうとう動かなくなってしまった
トパーズ色した わたしの鍵
普段持ち歩いているバッグの中で
かさこそ這いまわりながら
わたしの吐き出す
あのひとへの恨みとか辛みとか
どうしようもない思いを食べてくれた
トパーズ色した わたしの鍵
夜毎 バッグの中より這い出ては
複雑に刻まれた鍵山で
手が届きようもない鍵穴の奥に溜まった
鬱屈した涙の滓を掻き出してくれて
寂しがりやのわたしを優しく慰めてくれて
あのひとに足りないものを知っていた
トパーズ色した わたしの鍵
今は薄墨色した殻を身にまとい
銀色の細い糸でファスナーに支えて
その時をじっと待っているように思えた
わたし
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