E minor 7th(きざし)/恋月 ぴの
にわか雨は窓ガラスを叩く激しさで
海辺の汐臭さをわたしの部屋まで連れて来た
波音のひたひた寄せるテーブルで
いつか拾った貝殻の擦れる音色がする
ハンガーにかけたわたしの白いブラウス
温もりのかたちを映したまま
雨上がりの赤く染まった夕暮れを見つめ
パフスリーブの傾斜に沿って
したたり落ちる
柔らかいものにくちびるを濡らす
一度でも袖を通したブラウスは
胸元の息づかいを忘れたりはしない
いつか拾った貝殻にも似た
ブラウスの華奢なボタン
背後から迫る夕暮れをじらしたくて
思わせぶりにひとつひとつ留めてみた
透き通るブラウスのしたに
黒いキャミソールを着けるのは
わた
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