ぷかぷか/恋月 ぴの
 
ぷかぷか波間で浮いているのが
一流のサーファーだと思っていた
金づちのわたしにとっては
それでも素敵すぎて
おなじようにぷかぷか浮いている
ボードの数を数えたりして
どれがあのひとなのか
サングラスをちょっとずらしてみたりする
おじさんが立ててくれたビーチパラソル
やっと夏らしさを波音に感じられて
ひとりお留守番は物足りなさと
読むでもなく眺めるでもない雑誌に
さっきから気になる怪しい視線
腹ばいになっているあなたには見えない
もくもくと逞しい積乱雲
沖合いが霞んでいるのは何故なんだろう
どこまでも日焼けした怪しい視線が
たいくつしていたわたしの素肌を遮って
ひんやりとした飲み物の音がする
「ひとりってわけはないよね」
見上げた逆光にも
爽やかすぎる白い歯並びが笑って
沖に向ってパドリングするあなたには見えない
ちょっとぐらいならいいかも…
黙って受け取った紙コップのなかで
溶けはじめた氷が
夏の日差しを呼んでいる


   グループ"ラヴ・ジェニック"
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