愚者の楽園(マリーノ超特急)/角田寿星
 

フナムシ退治にはジャスミンガスが著効で
それは彼独自の研究成果で
私は毎週ジャスミンガスの原料を届けにいく

かつて駅には整備士がふたりいて
私の入り込めないかたい友情で結ばれていて
ある日 親友に無断で
ジャスミンガスの効能を管理局に報告した同僚は
めでたく上級技術職に転身して
彼はひとりになった

(だってさあ
 エラくなって迎えにいくなんて不可能だよ
 え 誰をって?)

たったひとつの彼のこだわり
それは
ジャスミンガスは使用前日に製造すること

ジャスミンを抽出し終えて
手のあいた私は彼の庭をこっそりのぞきにいく
武骨な駅舎の片隅に設けられた
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