海を渡る(マリーノ超特急)/角田寿星
「線路の上を歩いて海を渡る
それ自体はけして珍しい行為じゃない
だが
心してきいてほしい
次の駅にたどり着くことのできる者は
きわめて稀である
「大洋をどこまでも縦断する一本の直線
それは島嶼
それは紡がれたほそい蜘蛛の糸
それは世界をやさしくコーティングするシナプス
それは人類にただひとつ残された叡智
「必需品 まずは
一本のおおきな水筒と
絶縁体の手袋と靴を用意すること
線路は帯電していて触れると必ず体を蝕む
また駅間の距離は定かではないが
夜通し歩いても二日は優にかかる
「マリーノ超特急は週に一本
南回りの便ば
[次のページ]
前 次 グループ"マリーノ超特急"
編 削 Point(10)