愚者の楽園(マリーノ超特急)/角田寿星
 

火曜日には
お気に入りのアクアバイクに跨がって
積めるだけ積んだジャスミンの花束を届けに
海上に浮かぶ列車整備駅まで出かけていく

海に囲まれたプラットホームで陽に灼かれて
彼は私を待ってるだろう
明日停車する海洋特急の準備に大忙しで
流れる汗と機械油にまみれて
私をみつけて手をふってほほえむだろう

明日はマリーノ超特急が到着する
海に敷かれたレールをしずしずとやって来る
停車時間は一時間
次から次へ迫りくる仕事を
彼はひとりでこなしていくだろう

エンジンの点検と調律
車輌のサビ落とし
滑車にこびりつく塩塊の除去
客車に機器に侵入するフナムシ退治

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