海を渡る(マリーノ超特急)/角田寿星
ルカもクジラも人類の敵なのだ
彼らに見つかったら最後
四肢から徐々に喰われて
私の存在した証はどこにもなくなってしまう
「このちいさな街に生をうけて
なにひとつ不自由なく暮らしてきた
それなのにどうしてだろう
駅がぼくをいざなうんだ
旅に出ようとぼくをいざなうんだ
「海を渡るには駅を見つけなくてはならない
駅の正確な場所は誰も知らない
規約上は誰にも訊いてはならない
秘密裏のうちに目くらめっぽうに
探す 薔薇の薫りのする方へ
「駅員は親切にも最低限の必需品を用意して
ボン・ボヤージュ! 旅に出る者を祝福する
駅員は海を許しなく渡
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