海を渡る(マリーノ超特急)/角田寿星
 
く渡る者を取り締まる
 彼らはためらいなく密航者を射殺する
 駅に駅員のいたためしはなく
 さびれたプラットホームがぽつんとあるだけだ
 駅は
 存在しない

「風をつらぬいてきこえるのは
 マリーノ超特急のユニゾンシフト
 姿をみたことはない
 音だけの幻の列車だ
 私は思い出す私の成し得なかったくさぐさを
 ユニゾンのこだまはいつまでも続く後悔のように

「ぼくははだしで
 海上のプラットホームに立っていた
 これからぼくの渡るまっすぐな線路だけを見ていた
 次の駅は
 かすんでまだ見えない
 歩きはじめる

   グループ"マリーノ超特急"
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