夢(一) 全文/沼谷香澄
 
色いりんごを四つに割って丁寧に皮むいて喰う 冷たい 苦い
雨が近い。磯の匂いがする。
腹這いになると下腹が痛むので丸まって寝る床が生温い
かつては、鬼門に頭を向けて眠る私の外と内を同時に通り過ぎていった。またあるときは、私たちの娘(!)の前に姿をあらわして、何かをして見せたらしい。初めは興味深げに見ていた娘も怖がるようになった。
父の生霊。かわいいものを慈しむことの出来なかった(出来ずにいる)父の念(哀しみ)。希望もなく絶望もない父の念。希望なく絶望なき父の念。希望と絶望。
罪で
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   グループ"個人誌「Tongue」収録作"
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