夢(ニ) 部分/沼谷香澄
 
窓の外、乾いた風がぱらぱらとヤマモモの葉を鳴らす。猫がきりりと座りなおす。首を長く伸ばして何かを凝視している。
不可能な猫が財布を手に持って医者行ってくると窓閉めて出づ。
不可能な猫が小さな車椅子引いて座敷を駆け回りおり。
不可能な猫が座敷の戸を開けて人に鼠を見せに来たりぬ。
昔死に目に会えなかった猫がいた。一匹は安楽死、一匹は失踪。いなくなった猫達に別れを言えなかった事を私は三十年間思い続けた。ペットロスなんて言葉はなかった。
家族構成が変遷するたびにパンを捏ねるように心が変形した。家族の関係が変化するときにも。?
[次のページ]
   グループ"個人誌「Tongue」収録作"
   Point(2)