夢(一) 全文/沼谷香澄
 
彼岸から呼び続けてる猫がいる、いいや、あの子はいま膝にいる
気温二九度。湿度六〇%。さあこれからだ、というときに、抑えつけるものがまたやってきた。いいかげんにしてくれいったい誰なんだ。と問い詰めて二十年すこしずつすこしずつもつれた神経回路はほどけていって私は大人になった。
太陽は頭上に眠り青空は不吉な銀に沈み始める
私の尖端を押し戻しているのは何か。母ではない。母は私を愛していた。ただやり方を間違えただけだ。母とはもう完全に切れている(臍の緒だ)、一方で父の影響が大きいので早く異化するように占い師は言った。
[次のページ]
   グループ"個人誌「Tongue」収録作"
   Point(3)