流動体 より/沼谷香澄
都市部では人の体を流れゆく水の違いが見て良くわかる
黒い。黒い。水木の樹液たっぷりと飲んで太ったアブラムシども
死であった 指先を病んだ結果の 花瓶の脇の携帯電話
平和に 光の当たらない場所でアカマンボウが海水を飲む
猫は水 太った猫はたっぷりの水 日にコップ一杯の水
生に期間はあって短い死にも期間はあるのだきっととても短い
鈍色の煙の幕をくぐるときまなうらの平原はわたしの中にある
外に出る(くやしい)(私のせいじゃない)空気に混じる水がきれいだ
枯れ枝と思って切った切り口がまだ青かった 飲んでた。ごめん
菜の花や時は東に気は西に身体は乳酸菌の床這う
初出:Tongue8号 2004年6月13日
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