アオミドロ(散文詩)/そらの珊瑚
 
 見えなくてもそこのあるものは、実際のところ世の中にあふれている。見えなくても聴こえる。見えなくても、そこに存在する。決してオカルトではなく、純然たる事実なのだ。
 実家の家の前には、かつて小さな川が流れていた。立ち並ぶそれぞれの木造の日本家屋の前には、似たような灰色の石やコンクリート造りの橋がかかっていた。あの橋は家の敷地の一部だったのだろうか。とすると、川の空間の一部をそれぞれの家で所有していたことになる。川の水は、底のアオミドロが手に取るようにわかる穏やかな日もあれば(アオミドロというのは緑色の髪の毛のように長い藻である)台風の去った後などは増水して、子供心にも尋常ではないと思われる地面す
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