シークレット(散文詩)/そらの珊瑚
私は苺を潰して食べるのを無上の喜びとする女です。完全に潰すのではありません。
いうなれば半殺しです。苺を半殺しにするのです。
半殺し、などと、物騒な言葉を知ったのは、お彼岸の時だと記憶しております。母親がおはぎの材料である小豆の潰し方で、そういう呼び名のあることを教えてくれたのです。半殺しにされた小豆は、言葉通りに半分だけ原型をとどめ、まさに半殺しの状態といえました。料理というものは、命を料理するわけであり、料理される側からしたら、残酷なことであり、台所は勝者の法律のみがまかり通る、いわば裁判なしの処刑の場です。
その時ほんのかすかではありますが、山椒の木で作られた擂り粉木(スりコギ
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