沙弥子/草野春心
四月、僕は
川のある町に
あたらしく暮らし始めた
水をふくんだ日の光を
吸いこむと、眼には涙が滲んで
黄色い床に積まれたままの
段ボールをつぎつぎ開くように
盲滅法に、きみのことを思う
沙弥子
いつかの夜中、
狭くて寒い何処かの部屋で
きみが手品のタネを
明かしてくれるのを待っていた
けれども誰かが扉を閉めると
最後の灯りが静かに消えた
沙弥子、
きみのくれた豊かな愛は
濁った流れになって、未だ
僕の体に澱みをつくっている
でも僕の愛は、きっと
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