沙弥子/
草野春心
きみの唇から欠伸とともに
放たれていった
散っていったんだ
四月、
山間から届く
真あたらしい強い光を
吸いこむと、胸はぎゅっと痛んで
風が土埃を運んでくると
僕の体の小さな澱みは
また少し、その色を深くしてゆく
沙弥子、
僕はしりたい
きみの居る町には
川があるのだろうか?
沙弥子。
きょう、日の光のなかで
裏返っていたすべてのものが
微笑みながら
輝きながら
そっと表に戻っていったんだ
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グループ"春心恋歌"
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