まんぼうのこと/はるな
曇天。呼び出しに答え、すぐに放り出されたあと、ひとりで水族館へいく。
締め切り時間間際にくぐるゲート。入ったあとすぐに、うしろでシャッターが閉まる音。
館内は暗く、ごく控えめな音量で歌詞のない音楽が流されている。水槽から反射してゆれている光。ミズクラゲの水槽(いままでみたいくつかのミズクラゲの水槽はどれも円柱型で、360度ぐるりと見られるようになっていた)がいちばんすきで、ずっと見ていられる。大学生くらいのカップルが、手をつないで何組も通り過ぎていく。
おおきな水槽の前にたち、いったいどちらが、「こちら」なのかわからなくなってしまう。背面の光に反射してうつる顔。通り過ぎる人々、なんだか遠
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