まんぼうのこと/はるな
か遠くのほうで聞こえる子どもの呼び声。
むかしああいう風に水族館につれてこられた。ほかの何人かの子どもたちと、その母親たちと。べつに好きじゃなかった。ほかの子どもたちが特によろこんでいた「磯のふれあいコーナー」も。浅瀬のいきものに触れるのが特徴で、平べったい水槽から生ぬるく、しめったにおいがしていた。「ひとでにさわれるよ。」「かにもいるよ。」まだおそろしく厳しかった母親が、いつもより柔らかく笑うのだけがうれしくて、べちゃべちゃしたひとでを持ち上げてみせたりした。
でも、説明書きは好きだった。
「まんぼうの肌は繊細で、手でさわるだけでもあとがついてしまいます。」
「ミズクラゲはその姿から
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