やすらかなこと/はるな
夫はわたしの手足を縛る、とても適切なやり方をしっている。どうしてだかはわからない。そういえば、最初からそうだった。どうしてだろう。他人なのに。
土曜日だというのに、部活動でもあるのだろうか、制服を着た高校生がひらひらと歩いていく。あかるすぎるくらいに日が照り、こぼれるほどの雪柳の横を通り過ぎると緑のにおいがした。それで、きゅうに思い出した。
「質量保存の法則が」
二日前に、デパートのトイレで(洗面台とはべつに、すこしはなれた場所にメイク・ルームがあって、鏡が四つならんでいて、それぞれの鏡の前には椅子があり、仕切りでそれぞれ区切られている)、女の子が三人かたまってそんな言葉を言っていた
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