批評祭参加作品■回り道、つぶやく。 ??五十嵐倫子『空に咲く』について/岡部淳太郎
 
とによって中断される。これまでの例で言えば、思考の中断は心の回り道をそのまま追うことになっていて、それが語り手の偽りのない心の道筋を誠実に伝えることでもあったのだが、ここではやや趣きが異なっている。本を読む、「ページをめくる」という行為は、長い人生の道を歩むことの比喩になっていて、その中断は生を俯瞰的に見つめ直すことにつながっている。それは自らの生に対する見つめ直しであると同時に、「生きているものたちには/限られている/時間」、つまりこの世の生全体を見つめ直すということにもなっている。そしてそれは、「とたんに何か 風が吹いたようにすり抜けてしまう」という、気づきの瞬間でもある。この詩の最終連、「だ
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   グループ"第3回批評祭参加作品"
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