批評祭参加作品■回り道、つぶやく。 ??五十嵐倫子『空に咲く』について/岡部淳太郎
れがこれまで引用してきた詩と決定的に異なるのは、その心の動きが「エマ」の死によってその死に沿うような形で動いているところだ。引用部分の後、「友達からメールが届」くが、それも「『メイが死んじゃった・・・』/一緒に暮らしていたシェパード/もう寿命だからと言っていたけれど、私も悲しくなったよ」と、「死」というキイワードに沿ってのことである。当たり前だと思ってはいけない。肉親の死という切実なテーマであればあるほど、作者はその切実さから逃れられないものであり、普通は「死」という一点に向かって言葉が凝縮していくはずなのだが、この場合「死」はそこに向かって凝縮するものではなく回転運動の中心軸であるような書き方が
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