面接(11)/虹村 凌
てきた。
「ねぇ、一緒に住むって話、前にしたの覚えてる?」
「うん」
「もう一回聞くけど、一緒に住まない?」
「いいよ。一緒に住もう」
「!」
俺の答えが意外だったのか、彼女は驚いた表情をしていた。驚くくらいなら、最初から聞かなければいいのに、と思ったが、そんな事をおくびにも出さない。この瞬間に、俺は記憶を塗り替える自分を認識した。
埋もれてしまえば、事が進むのは早い。俺は、膨れ上がる違和感を彼女に告げる事なく、ドロドロとした本能に従い、動き、毎日をこなしていった。
ある日、彼女は残業を命じられ、俺は一人で二人の部屋に帰る事になった。別に特別な事ではない。
[次のページ]
前 次 グループ"面接"
編 削 Point(1)