水のうえの夜/木屋 亞万
のどの乾く夕ぐれ
雲があかいのは
燃えているからか
くろい腹の雨雲が
こげた水を降らす
声が出ない火傷
つめたい水が喉の
痺れをあらい流す
希望がむなしい
なまぬるい雨と
煙りがからみつく
水はあるのに飲めない
助けを呼ぶよりも
逃げなくては、どこかへ
心配な人たちが耳鳴り
幻聴に我を呼ぶ
我思うゆえに一人あるく
五感を疑いはじめる
とんでもない悪夢の
寝苦しい夜かもしれない
じきに目が覚めて
寝汗をぬぐう
幻をおもう
歩く孤独な人のむれ
距離感のうしなわれた道
のこされた廃墟をあるく
雨さえもしずかで
耳鳴りが天までひびく
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