彼が散歩から帰ると、右脚の膝にやはり違和を感じ、シャワーをそこに浴びせようとしたが、最近は、暑いのか、寒いのか、トント分からぬ、と感じていた。
着替えて、書斎に向かうと、ノート・パソコンで一件の ....
連れ立っていって連れ立っていって
歩行く 草に 血、鉄の味
しかと樹木の恩恵は近づいても
連れ立っていって連れ立っていって
日々 耳を鍛え 疑え
ソの音を聴く
ハーモニーに乗った個 ....
彼は何度も風呂に入った。その度に膝の違和感は消えて、気づくと又痛み出した。
遂に風呂の栓を抜くと、シャワーで髪と体を洗った。
その間、ユウスケは情緒と論理について考えて、又、芥川龍之介 ....
近くのお寺さんを巡ってその解説文を読んでいると
このお寺は「駆け込み寺」であった、とか
「縁切り寺」であったと記載されていた。
その、時代は翻って分からぬが
家庭内で例えば旦那が女房に暴力をふ ....
ネット詩人の墓 花緒氏
https://creative-writing-space.com/view/ProductLists/product.php?id=1145
ちょっとプチ怒りが収 ....
ユウスケは一連の仕事を仕上げると、解放されて、自宅に帰った。
今朝は忙しく、一日三頁をノルマにしている私小説を書く余裕が無かった。
その代わり、彼は「粗鉄とインク」という詩を書いた。詩の、リ ....
粗鉄のような
言葉を並べ
春 昔
ひとり薪くべた日々よ
インクの香に
金魚の水槽
──いつの時代も隠居が流行る
庭にソウビが枯れていた
思いかえして又
粗鉄のよ ....
ユウスケは複雑であった。ユウスケは現在の自宅を気に入っていたが、そもそもユウスケの父方の、さすらいの民といった精神性を受け継いでおり、本当に家賃の支払いに困ったら、もっと安いアパートでも引っ越しても ....
カナは激怒していた。女が男になる、とはこの事か。ユウスケは彼女のパソコン・トラブルの対処に追われた。カナ、彼女はいつもジタバタしていた。創作するにも、アイディアに於いて、デバイス面に於いて、ユウスケ ....
最近、ユウスケ、彼は原稿用紙三枚を、毎日、埋める事が、苦でなくなってきた。
内容は相変わらず無内容といえば無内容であったが、彼は以前と比べて変わっている、というのは事実であった。
彼は久しぶ ....
思いがけず
昔の知り合いに会って
微笑み合い
孤立無援に帰れよ
シャッターが閉まっている
商店街を 朝
抜けてゆくのもいい
螺子のしなり
詩の為に 詩を書いた春の思いも ....
ユウスケは眼鏡を捜した。見あたらないのである。
最近、彼は急に老け込んだ。自身、一年が十年のようだ、と感じた。ああいった生き方もできる、こういった生き方もできる、そういう思考がユウスケからトント、 ....
私は又吉直樹・せきしろ著「カキフライがないなら来なかった」を本棚に戻した。そしていつもの椅子に座り、考えた。
「カキフライがないなら来なかった」は自由律俳句集である。その作品群の多くは、表題の ....
ユウスケは或る品評会に来ていた。
物々しいというか、ある種インパクトのある絵が一枚あった。
絵の周りには人が大勢つのっていて、その品に審美眼をこらすのにも、一苦労だった。
そして、彼は具 ....
ユウスケは二日酔いの頭で思いかえしてみた。
インターネット上に数人、アルコールの問題で、断酒にのぞんでいる方がいた。元々、彼はアルコールに弱い人間であって、お酒の問題とは無縁であると思って ....
ユウスケ、彼は仕事仲間の男と相談していた。
「相手に誤解を与えてしまったまま、連絡がとれないんですけれど」
「それこそ、誤解は、誤解のままに、だ」
誤解は誤解のままに、と云う言葉は初め ....
今朝は寒いのか、暖かいのか分からなかった。ユウスケ、彼が妻に訊ねると
「丁度いい」
という、なんとも言えない答えが返ってきた。
彼は朝湯に何度か浸かり、元気を出そうとつとめたが、叶わなかった ....
ユウスケは二日酔い、の頭を抱えながら、インターネットのコメントの返信を行っていたが、誤字脱字が多い。一つのコメントを書くに一時間半かけていたらば、この先が思いやられる、と思った。
Xは元々、アカ ....
ユウスケ、彼は妻のカナと夜更け、近くコンビニまで歩いてゆく事にした。
彼は久しぶりにウイスキーが飲みたくなった。と云うのも、妻のカナが、歌詞を入力すれば音楽として成立させてくれるAIアプリ ....
ユウスケは現代詩人会の表明文と睨めっこしていた。
「わたしたちはロシア.プーチン大統領に起因する不条理に反対し、ウクライナの人々の安全と平和を強く望んでいます」
ウクライナ侵攻が始まって四年に ....
今朝、ユウスケが目覚めたのは七時頃だった。こんな遅い目覚めは久しぶりだった。
彼は寒いので朝湯に浸かろう、と考えた。
しかし、妻のカナがあれをしてくれ、これをしてくれ、と云う。彼女の小説の原稿 ....
時は夕刻だった。
ユウスケは自分の書いた私小説を妻のカナに読んで貰う事にした。何度か頼んだが、なかなか聞き入れられなかった。彼女は大学の出で、確か文学部卒だったような気がした。わからなかった。歴 ....
ユウスケはこの日も深夜に起きてしまった。シャワーを浴びて、あたらしい服に着替える。
やっと落ち着いて書斎のノートパソコンの前に構えたが、やがて方々にメッセージ、具体的にはお詫び文を書いている内に、 ....
ユウスケは深夜、三時頃、目を覚ました。
彼は二階キッチンの換気扇の下、煙草を喫った。手のひらを眺めると、ピクついた。彼の心中のバランスは崩れていた。崩れて、いつまでも戻らない。不穏な感じがずっと続 ....
ユウスケは深夜三時に目を覚ました。妻のカナはもう起きて洗顔を済ませていた。
「おはよう、よく起きたね」
彼女は笑いながら言った。
ユウスケはおーいお茶のペットボトルを取ると、パソコンを ....
マイナンバーカードの更新に必要な書類が届いた。一週間、放置していた。しかし、ユウスケは明日、久々のしっかりした仕事であったので、今日の内に彼は証明写真を撮りに行こうと思った。そういった手間のかかる事 ....
書斎は寒かったが、ユウスケは籠城を決め込んで小説を書く事にした。何が彼をそうさせるのか分からない。しかし、ここ数日、彼は小説の習作ばかり書いていた。しまいには昨日、ブックオフで小説を十冊ほど買 ....
窓の外を大きな白い雲が流れていて、それでも晴れている。畑の玉葱の葉がシャキッと伸びている。この玉葱はユウスケの父が植えたものだ。しかし最近父に会っていない。連絡もしていない。友は東京にいて、地 ....
ユウスケは空をじっと眺めていた。先ほどまで晴れていたが、今、不吉めいた大きな灰色の雲一つが、頭上に居座っている。
ユウスケはやっぱり禁煙薬によって、マズい味しかしないハイライトを揉み消すと、ベラ ....
怠かった。朝から薬を何錠も服して、書斎の暖房は頭をぼうっとさせ、足は冷えたままだった。ここに回覧板がある。開いてみたがユウスケの頭の中に情報が入ってこない。外は小雨がふっていた。傘もささず、ユウスケ ....
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