[7]佐々宝砂[2004 12/20 04:26]★1
る
私は人に捨てられた
***
「記憶の海」
髪の毛をふりみだし、腕をひろげて狂女が漂つてゐる。
白い言葉の群が薄暗い海の上でくだける。
破れた手風琴、
白い馬と、黒い馬が泡たてながら荒々しくそのうへを駆けわたる。
***
「青い馬」
馬は山をかけ下りて発狂した。その日から彼女は青い食物をたべる。夏は
女達の目や袖を青く染めると街の広場で楽しく廻転する。
テラスの客達はあんなにシガレツトを吸ふのでブリキのやうな空は貴婦人の頭髪の
輪を落書きしてゐる。悲しい記憶は手巾のやうに捨てようと思ふ。恋と悔恨と
エナメルの靴を忘れることが出来たら!
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