[6]佐々宝砂[2004 11/28 19:47]☆
三木露風『廃園』より代表作品。
***
「去りゆく五月の詩」
われは見る。
廃園の奥、
折ふしの音なき花の散りかひ。
風のあゆみ、
静かなる午後の光に、
去りゆく優しき五月のうしろかげを。
空の色やはらかに青みわたり
夢深き樹には啼く、空しき鳥。
あゝいま、園のうち
「追憶(おもひで)」は頭(かうべ)を垂れ、
かくてまたひそやかに涙すれども
かの「時」こそは
哀しきにほひのあとを過ぎて
甘きこゝろをゆすりゆすり
はやもわが楽しき住家(すみか)の
屋(おく)を出でゆく。
去りてゆく五月。
われは見る、汝(いまし)のうしろかげを。
地を
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