[6]佐々宝砂[2004 11/28 19:47]



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「雨の歌」

静かなる心の上に
やわらかに落つるひゞき
雨の音こそはなつかしけれ。

つくづくと聴き入れば
雨のひゞき
そはさながら、白き額を寄せかけ
はづかしき彼の女(ひと)の泣くに似たり。

また幽かなる時
破れゆく悲しみ、
新たにふりそゞぐ時
溺ゝるうれひ。

われ、いとも恋しき園をあゆみ
ある日夢みし緑の木かげよ、
美しき薔薇(さうび)はなやみ、
径(こみち)は廃れ、
脆き涙にみちて
階段はくづされたり。

わが白き、若き、雨のひゞきよ、
いたましく希望(のぞみ)は濡れ
かゞやきは彼処に埋もれぬ!

ああ、さ
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